型を破れば164万円もオトクになった。大手企業の提案を疑え!?
こんにちは。菅です。
今回のお話は、画一的な提案内容に疑問を持つことで、劇的な違いをもたらしたケースです。
システム構築では「サーバ/クライアント方式」という形態が一般的です。
しかし、どんな場合でもこの方式がベストな答えとは限りません。
特に中小企業には高価なサーバーがいらないこともあります。
相手の提案を鵜呑みにすると、不必要なIT投資を行なうこともよくある話です。
社名や人名は伏せておりますが、この話は私が関わったホントの話です。
機材の金額についても端数を省いていますが実際の数値です。
あなたや、あなたの身の回りで思い当たるフシがないか?よく確認してみてください。
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「こんなにお金かかるモンなんですか?」
貿易業を営むJ社の決裁役員H氏から電話があった。
社内パソコンの入れ替えに伴い、有名企業O社に、見積書を提出してもらったのだという。
「パソコン12台とサーバ1台で370万なんですけど・・・この見積を見てもらえますか?」
O社はシステムインテグレーションサービスでは大手の企業だ。
システムインテグレーションとは、いろいろな種類のハードやソフトを組み合わせることで、利用目的に合ったコンピュータ・システムを構築するサービスのことだ。
構築だけでなく運用・保守なども一括して請け負うことも多い。
ハードウェアとソフトウェアは何万もの組み合わせがある。
依頼主の状況や環境、望むべき姿をしっかりと把握して、その依頼内容にフィットしたものを提案するのは、プロでも難しい。
早速手にとった見積書は2つにわけられていた。
1枚はパソコン12台について、もう1枚はサーバについてであった。
クライアント側(パソコン12台分)については、初見では特に問題点は無かった。
機器の値段も市価と同じだ。
少し時間を割いて調べれば、改善の余地はあるが、提案内容としてはまだマシであった。
だが、サーバ側の見積書を見たときには絶句した。
「Hさん。この見積書には業務用システムやソフトウェアの項目が見当たらないのですが、どんな用途でO社に依頼したのですか?」
「うちでは、特に業務管理システムとかなくて、ワードやエクセル形式で、個人がそれぞれ書類ファイルを持っているんです。それで今回、コンピュータの入れ替え時に、ファイルの共有ができる”書庫”のようなものが欲しいって言ったんです。」
「なるほど。それでサーバが必要だと言われたわけですね。」
「ええ。ファイルを共有させるためにデータやファイルを一箇所に置いておく領域が必要だから、サーバを導入しましょうとのことでした。」
「う~ん。他社にも合見積もり出してみましたか?」
「やっぱり、そんなに高いんですか?」
ぶっちゃけた話をしよう。
「ファイルを共有する書庫のようなもの」に”サーバ”のような高価なものはいらない。
サーバーと呼ばれるコンピュータにも、いくつか種類がある。
このケースでは、ファイルサーバという種類になるのだが、
O社の見積もりは明らかにファイルサーバではなく、それよりも高価で高性能な、
アプリケーションサーバという種類のものであった。
【O社の提案見積書の概要(サーバ用1台)】
+メモリ1GB
+RAIDコントローラ
+ハードディスク容量72GB×3
+DAT機器
+DATカートリッジ×4
・15インチ液晶ディスプレイ
・サーバ用OS
+OSアクセス用クライアントライセンス×12
・バックアップ用ソフトウェア
・無停電電源装置
・OSインストールサービス費
・バックアップ導入設定サービス費
・無停電電源装置設定サービス費
・据付調整費
合計金額 135万円 .
ファイルサーバの構築で最も大事なポイントは、データが失われる可能性を低くすることだ。
あまり知られていないが、とても重要なことをお伝えする。
大切なデータを保存する機械がハードディスクなのだが、
実はハードティスクというのは消耗品であり、数年も使用すれば必ずガタがくる。
アクセス頻度の高いハードディスクはすぐに劣化し、早い段階でデータの読書き速度も低下している。
さらに、サーバ自体も精密機械のため、壊れないという保証はない。
そこで、「いかに簡単に、いかに早く復旧できるか」という点も考慮しなければいけない。
O社の提案は「データが失われる可能性を低くする」点は合格だったが、復旧については考慮されていないようにみえた。そして、何よりもコストがかかりすぎている。
そこで私は思いっきり違う提案を行った。
【修正後の見積書の概要】
+250GBミラーリング2アレイ(全容量で500GB)
・交換用ハードディスク×1
・NAS設定費
・GIGAbit LAN対応ルータ
合計金額 19万円 .
「菅さん。これO社の見積と1桁違うじゃないですか。金額あってます?」
「ええ。あってます。それで御社のやりたいことは達成できますよ」
「ずいぶんとすっきりとした内容なんですが・・・説明お願いできますか?」
小規模用のファイル共有にはNAS(ナス)で十分である。
NASはネットワーク・アタッチド・ストレージといって、ネットワークに接続できるハードディスクと考えてもらえばいい。
NASにもいろいろな種類があるが、
今回はデータの安全性を高めるためのミラーリングに対応したNASを採用した。
ミラーリングとは、同じ内容のデータ状態を2台のハードディスクに自動コピーする技術である。
まさにミラー(鏡)のような仕組みなのである。
メリットとしては、本稼動のハードディスクが壊れても、
予備ハードディスクに切替えるだけで復旧し、業務を滞らせる時間を最小限にできる。
また、データが2重に用意されているため消失する危険性も低い。
O社の提案するサーバもミラーリングが可能だが、プロフェッショナル仕様の製品を提案している。
これでは復旧に熟練の技術者が必要になり、復旧コストが高くなるだけでなく、復旧するまで業務が停止する。
同じミラーリングでも、素人でも扱えるような仕組みを選択すべきである。
また障害時にすぐ交換できる予備ディスクも合わせて提案に盛り込むことも忘れてはいけない。
ハードディスクの記憶容量は500GBを選択した。
これは貿易業の傍ら、デザイン部門も抱えており、イラストや印刷用データなど、
容量の多いファイルを共有保存することを考慮してである。
O社はJ社の今後のビジネス展開までヒアリングしていないらしく、
提案してきた容量は140GBであった。
社内ネットワークでファイル共有を行う場合には、
データやりとりの待ち時間や作業効率を上げることも重要になる。
GIGAbit LAN(ギガビットラン)という、技術を使えば快適な社内ネットワークが構築できる。
通信規格としては、従来LANの10倍速の規格である。
GIGAbit LANに対応させるには、各コンピュータはもちろん、
コンピュータ同士を繋ぐ「ルータ」という機器も対応していなければならない。
O社の提案では、各パソコンやサーバは、GIGAbit LAN対応になっているが、
肝心のルータは提案が抜けている。それなら高速LAN対応パソコンを提案する意味はない。
J社で使用されているルータの型番と性能を確認したところ、
高速データ通信用ではなかったため、こちらから新規提案したのだ。
提案内容が根本から変わったことになるが、これで10倍速LAN対応となり、
データの待ちストレスが少ない社内ネットワークも実現する。
当初の目的の社内ファイルの共有書庫は、容量が約3.6倍、大容量の500GB。
そして、ミラーリングでデータの保守性も飛躍的に向上している。
それなのに、最初の見積書と比べて、116万円の差額現金が手元に残るのだ。
もちろんH氏は大満足だった。
「いや~。提案を過信せず、電話一本をかけるか、かけないかの違いですね。」
余談だが、この後、12台のパソコン見積もりも詳しくヒアリング。
J社の意思を酌んで修正見積を出したところ、さらに48万円のコストダウンに繋がった。
全部で370万円の見積もりだったが、最終的には200万円で済んだ例である。
必要なものだけでなく、それ以外の設備にもバランスよく投資を行い、
システムの潜在能力を活用できるようにした。
それでも170万円の現金が手元に残ったのである。
画一的な発想の提案書は、少しの発想差で劇的なコストカットが可能なケースも多い。
特に中小企業は大手有名企業の言いなりになって、こんなところで現金を消費する必要はない。
持ち前の機動力や型を破る発想で対応すれば、より良い環境をより安く手に入れられるのだ。
菅 憲市

