投資のはずが負債になっていた!?誤った安全対策と流行語の落とし穴。

2007 5月 28日 - ケース・事例

こんにちは。菅です。

「ファイアウォール」という言葉を耳にしたことはありますか?

今回の話はインターネットが普及しだし、ITバブルが生まれる頃の話です。
当時はインターネットの危険性から、社内ネットワークを守る方法として、
「ファイアウォール」の使用が叫ばれていました。

-インターネットは凄い力を秘めている。
-でも、不法侵入や悪意を持ったアクセスが怖い。
-だから、ファイアウォールを用いるべきだ。

・・・という、わかりやすい解説でビジネス雑誌の記事にも「ファイアウォール」という単語が載り、
コンピュータやインターネットに疎遠な相談者が口にすることも珍しくありませんでした。

しかし、流行の言葉、新しい横文字、そんなところにもIT投資の罠が存在します。

今回の事例は成功事例ではありません。
クライアント重視の業者を選定できていなかったことと、
技術への理解がなかったばっかりに、ムダな投資をしてしまった会社のお話です。

あなたや、あなたの身の回りで思い当たるフシがないか?よく確認してみてください。

・・・・

「うちのインターネットって調子悪いんですよねぇ。」

WEBサイトの裏側で動くデータベースシステムのミーティング後、
O社の担当者Nさんが話しかけてきた。

「どうおかしいんですか?」
「繋がったり繋がらなかったりするんです。」

詳しくヒアリングしてみると・・・

Aさんが繋がるのにBさんは繋がらなかったり、Bさんは繋がるがAさんが繋がらないときもある。
AさんもBさんも繋がったと思えばCさんが繋がらなかったり、Cさんが繋がればAさんもBさんも繋がらなかったりする。
しかも、1日繋がらないときもあれば、朝は繋がっていたのに昼からは繋がらなかったり、その逆もある。

・・・と、いうことであった。

「いったい、どういうことだと思います?」
「・・・。ちょっと社内の皆さんに協力いただいていいですか?」

ネットワークが問題であることは間違いないだろうと考えた私は、
まず、社内ネットワークに問題がないかを確認するために、いくつか簡単なテストを行った。
テストの結果、問題点は外と内を繋げる接点にあることが濃厚になった。

「Nさん。インターネットに繋がる回線はどちらですか?」
「たぶん、ここだと思います・・・」

案内されたスペースにはADSLモデムやルータ、ハブなどのネットワーク機器が設置してあった。

調べてみると、ファイアウォール製品として有名な「ソニックウォール」という機器が設置されていた。
すぐさま型番を調べ、その性能や機能をチェックしてみると、驚くべきことがわかった。

「おそらく、こいつが原因ですね。」
「え?どういうことですか?これはファイアウォールだって聞いてますよ。」
「はい。そのファイアウォールが問題なんです。この機械から向こう側、つまり、インターネット側には10人しか接続できません。」
「ええっ!ほんとですか?」

このソニックウォールという製品はライセンス毎に価格が異なっている。
O社に納品されていたのは10ノード版といって、10人までしか通過できないものだった。

「どうしたら、解決できますか?」
「お金を出して、御社に見合ったノード数に買い換えるか、取り外すか・・・ですね。」
「取り外したら、危なくないですか?」
「大丈夫です。」

ファイアウォールとは概念のことであり、特定の機器を意味しているわけではない。
ここのところはよく勘違いされる点であり、プロを名乗る専門家でも誤った理解をしている人が多い。

実はファイアウォールを名乗る製品の導入が必要なケースは非常に少ない。
なぜなら、ファイアウォールを導入しなくても、社内ネットワークとインターネットは隔たれているパターンが多いのだ。

※ケースによってもその理由は異なる。専門的な知識や解説、専門用語のオンパレードになるので割愛するが、WindowsXPがメインの現在は、Windows2000がメインの当時よりも、さらにファイアウォールを別に用意する必要性が低い。

O社のケースについて、なぜ必要ないのかを説明するとNさんは納得した。
結局、この機器を取り外すこととなった。
納品時の提示価格では20万円~40万円はするであろう。
しかも、不必要なものに投資しただけでなく、その投資が業務の効率性に支障をきたしていたのだから目も当てられない。

O社に納品した地元IT業者は、何を考えてこれを導入したのかはわからない。
後日、Nさんに話を聞くと、インターネット導入も兼ねた社内ネットワークの再構築時に、Nさんから業者にお願いしたそうだ。
Nさんは雑誌でファイアウォールの存在を知ったらしい。
その提案を業者は止めなかっただけでなく、O社の将来展開は考慮されていないヒアリングでこのような10ノード版になったようだ。

この時は「ファイアウォール」がキーワードであったが、
最近では「無線LAN」や「Winny対策」「スパイウェア対策」「情報漏えい」なども挙げられる。

日進月歩で進んでいくICT時代。
業者も理解していない製品や技術が多い。
言葉に踊らされて、くれぐれも無駄な投資を行わないようにしてほしい。

2007 5月 28日
菅 憲市